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2009年 02月 17日 ( 1 )

壁と卵

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村上氏、イスラエル授賞式で講演 「制度が組織的に人を殺す」

 作家の村上春樹さん(60)が15日夜、イスラエルの文学賞「エルサレム賞」の授賞式で記念講演し、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に言及した上で「わたしたちを守るはずの制度が組織的に人を殺すことがある」と述べ、一人一人の力で国家や組織の暴走を防ぐよう訴えた。
 村上さんは、エルサレムで開かれた授賞式に出席することが「圧倒的な軍事力を使う(イスラエルの)政策を支持する印象を与えかねない」と熟慮した末、「欠席して何も言わないより話すことを選んだ」と明らかにし「メッセージを伝えることを許してほしい」と切り出した。
 村上さんは、小説を書く時「高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵」を常に心に留めており、「わたしは常に卵の側に立つ」と表明。壁とは「制度」の例えだと説明し「制度は自己増殖してわたしたちを殺すようになったり、わたしたちに他人を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる」と警告した。
 これに対し、「卵」は壊れやすい殻に包まれたような個々人の精神を意味するとし、個性を大切にすることで「制度がわたしたちを利用するのを許してはならない」と語った。
 講演は英語で約15分間行われ、約700人の聴衆が大きな拍手を送った。一方で「政治的な内容で不愉快。イスラエルに賞をもらいに来て批判するのはおかしい」(中年男性)という声も聞かれた。(信毎webより。写真も)

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村上春樹は大好きな作家だ。とは言え、彼の小説はあまりに特異で私の読解能力では歯が立たず、退屈なので読まない(笑)。彼の真骨頂はその独特な立ち位置からの鋭く尖った観察眼と、クールな筆致にあると思う。だからそれが生かされるエッセイ(という名の上質な文学)やルポルタージュでこそ、彼の作品は輝くのだ。前者の代表が「遠い太鼓」、後者が「アンダーグラウンド」。この2つが私のバイブルだ。特に「アンダーグラウンド」では魂がガシガシと揺さぶられた。ここで多くは語らないので、ぜひ読んでみてください。もし図書館で借りて読んだとしても、絶対に買って手元に置いておきたくなる本です。

今回のこの受賞式出席にあたり、相当各方面から取りやめるよう圧力がかかったと聞く。しかし周囲に迎合して口をつぐみ、結果としてやり過ごしてしまうことよりも、彼は堂々とその場に立ち、自らの主張を明らかにすることを選んだ。その姿勢はいかにも「村上春樹的」だと思う。

彼は物書きとして、常に「高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵」を心に留めているという。次元が違い恐縮だが、私も常に「批判的に物を見ること」を忘れないように留意している。マスコミを通じて情報を受け取る時、また物を書く時。それは「批判精神」である。批判とはすべてを否定することではない。物事の可否に検討を加え、自分の力で評価・判定することだ。

大学に入学した頃、地方から上京したばかりの同級生が興奮気味に話してくれたことを今も思い出す。「知ってたか?新聞って嘘も書くんだよ!」。社会学だかマスコミ論だか忘れてしまったが、彼は初めて受けた講義でそれまでの価値観を覆されてしまったのだ。

「壁」ではなく「卵」の側から。「殺す側」ではなく「殺される側」から。常に反対側から物を見て、まずは疑ってみる。そうして自分の頭で考えてみる。新聞やテレビの垂れ流す情報がいつも正しいとは限らない。
by cyril-aw11 | 2009-02-17 13:29 | 日常