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「居住中」?それとも「空き家」?

2008年も終わろうとしているが、今年(特に後半)は急速に悪化した経済情勢から不動産不況がキツくなった。数々のデベロッパーやマンション業者が倒産し、ここ軽井沢でもそのいくつかが影響を受けたような話も聞く。

思ったよりも時間がかかったとはいえ、そんな状況下で住居を売却でき、次のステップに進めた我が家は本当に僥倖だったと思う。そして、毎週末ごとに「今週はお客が見に来るだろうか」、「今週も反響がなかった」、「気に入っていたようなのに、何がいけなくて購入申し込みに至らなかったのだろうか」、「今週は所用で不在だったが、見学希望の客もいたのではないか」などなど、気の休まる暇のなかった無限回廊から脱せたことに深く安堵している。やはり住み替えにおける「買い先行」は精神衛生上よくない。

さて、持ち家を売却する際に必ず直面するのが「居住中のまま」売るか、「空き家」にして売るかという問題だろう。私も最初に仲介の不動産業者にその点を尋ねたが、「別に居住されていて構わないですよ」ということだった。引っ越しや仮住まいの手間や費用もかかるし、また売主の心理として何とか良い点を自らアピールしたいという思いもあり、ずるずると居住を続けてしまったのが失敗だったと今では確信している。

自分がその家を購入した際、数多くの中古物件を内覧した。その時のことを思い出せば結果は明らかだ。売主の目を気にせず、じっくりとクローゼットの中まで開けて良い点・悪い点をチェックできる。わからないことは直接売主からではなく、仲介業者を通して聞けばいいわけで、何もその場ですべての回答が欲しいわけではない。本当にその物件が気に入れば、何度でも足を運ぶのだから。そもそも売主が売却に都合の悪いことをわざわざ話すわけがない。だから売主もアピールポイントなどはそれとなく業者に話しておき、追加の質問などにはその都度答えるだけで良いのだ。結果、自分が購入した時も「空き家」だった。

言い切ってしまえば、不動産は中古であれ新築であれ、買主が勝手に想像を膨らませて思い込みで買うのが一番いいのではないか。売主は姿を見せず、その人格や生活臭を消して「モノ」としてニュートラルに売るということだ。誰かが「おばあちゃんの手作りヨモギ団子なら作り手の姿が見えるのは売りになるが、住まい手の調度品や生活スタイルは邪魔にしかならない」と言っていたが、なるほどと思う。契約時すら顔を合わせたくないという人もいるし、自分より若い売主にあれこれ先輩面で使い方なんかを教えて欲しくはないという人もいる。人さまざまなわけで、やはり「モノ」としてニュートラルに売り抜けるのがよいように思う。

「この場所に住みたい」という買主は必ずいるわけで、ある不動産業者は「この世に売れない物件はない」とも言っていた。だから勇気はいるけれど、引っ越して空き家にする。壁紙くらいは貼り替えて、その周辺の不動産相場より5~10%程度は安く売り出す。それでも最初の媒介契約期間の3か月で結果が出なければ、まだ価格が高いということだろう。売主はその物件に思い入れもあるし、いい物件だと思っているから安くは売りたくない。でも買主はニュートラルに「モノ」としての価値を見ている。「市場価格がその公平な価値水準なのだと受け入れることが早期売却への近道だ」と理解するのには時間がかかってしまった。
by cyril-aw11 | 2008-12-26 13:26 | 家造り全般
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