寒い冬? その3

私の好きなTV番組のひとつに「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日系、毎週日曜日23:00~23:30)がある。先月の放送で、地球温暖化の深刻な影響の証左となる「大発見」が紹介されていた。それは北極海に浮かぶカナダ・バンクス島で、ホッキョクグマとグリズリーとのハイブリッド(交雑種)がハンターによって仕留められたというものだった。そのどこが「大発見」だったのか?

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絶滅が心配されるホッキョクグマの狩りはアメリカでは1970年代に禁止となったが、カナダでは今でも認められている。そのため先住民をガイドに付けたハンティング好きのアメリカ人が、こぞってハンティングにやって来る(この10年で800頭以上のホッキョクグマが撃たれたというから常軌を逸している)。その中の一人が2006年4月16日、体毛は白いのに目の周りが黒く縁取られた変わったクマを仕留めた。DNA鑑定の結果、先住民ガイドがにらんだ通り、ヒグマの仲間であるグリズリーの父とホッキョクグマの母の両方の遺伝子を受け継ぐハイブリッドであることが判明、野性のハイブリッドが確認されたのは初めてだったので「世紀の大発見」と呼ばれたわけだ。

スポーツハンティングの是非はともかくとして、この「大発見」は極めて重大なことを教えてくれた。それは人間の営みによって引き起こされた地球温暖化が予想以上のハイペースで進み、それがかつて見られなかった種の「ハイブリッド」化まで引き起こすという末期的な状況にまで至っているということだ。

DNAが極めて近いホッキョクグマとグリズリーだが、本来は両者の生息するエリアはハッキリと分かれており、30年前までは北極圏の島々にグリズリーは生息していなかった。しかし1990年以降、北極圏の温暖化が進むとグリズリーが北上し始め、さらに氷の融解によって取り残されたホッキョクグマが、グリズリーのいる陸にあがるケースが増えたという。こうして出会ったホッキョクグマとグリズリーによって生まれたハイブリッドは、地球温暖化の悲しき申し子なのだ。

ホッキョクグマが捕食し、その命をつなぐアザラシにも異変が表れているという。ワモンアザラシは4月頃に雪と氷の間に巣を作り、雪の屋根によって天敵と寒さから赤ん坊を守るが、年々雪解けが早まり、多くの赤ん坊が無防備の状態にさらされるようになったことで生存率が急低下している。アザラシが減れば当然、それを捕食するホッキョクグマにも大きな影響があり、氷の融解が早い年は子グマの死亡率が高いということも分かった。

大陸棚で水深の浅い所はアザラシが多く、ホッキョクグマにとって絶好の狩り場だ。しかし北極の氷は2000年から急激に解け始めてどんどん海岸から離れ、大陸棚から遠ざかっている。ホッキョクグマにとってはただ氷があればいいのではなく、狩り場である大陸棚に氷があることに重大な意味がある。アザラシを捕食できなくなったホッキョクグマの数は50年以内に3分の1に減ってしまうという予測もある。

これまでの「神の見えざる手」とも言うべき自然のメカニズムは今、人間の手によって大きく狂い作動しなくなってきている。そして、それは遠いどこかの話ではない。われわれの住んでいる場所とつながっている同じ星の話であり、われわれの近い将来を映している鏡なのだ。

番組は最後にこう問いかけていた。

交雑を繰り返せば新しい種が生まれ、いつしかホッキョクグマは消えてなくなってしまうかもしれません。生き残りをかけた「進化」の末、陸の上で草の根を食べ、白くなくなってしまっても、ホッキョクグマと呼べるのでしょうか?
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by cyril-aw11 | 2008-02-20 13:24 | 自然・環境
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