銀色夏生さんの「つれづれノート」シリーズは、自分にとって座右の書だ。詩人である銀色さんのことを実は全く知らなかった私だが、結婚後に連れ合いが本棚に並べていたこのシリーズをふと手にとって虜になってしまい、それからというもの毎年6~7月に発売される新作を心待ちにするようになった。残念ながら一昨年、14冊目で終了してしまったのだけど。 ご存知のようにこの「つれづれノート」は銀色さんが日々感じたこと、考えたことをつづった日記なのだが、私には一つのテーマで貫かれているように感じられる。それは、「自由への戦い」ということだ。いかに自分が自由に精神を解き放ち、自分の思い描いた通りの空間で伸びやかに生きていくかを追求していく。その理想に近づいて行くためのもがき、歩みの記録なんだと思う。銀色さんは2度の結婚と離婚、2人の出産と子育てを経験しながら、ずっと自分らしく生きることのできる場所を探し続けていた。私は毎年綴られるこの日記を通して自分が感じたことを再確認したり、違う角度からの見方を発見したり、励まされたりしてきた。 そんな中で、今でも一番読み返すのがこの「庭を森のようにしたい つれづれノート13」なのだ。銀色さんが2度目の結婚生活に息苦しさを感じていた頃、宮古島に移住すべく土地を購入したことがあり(結局は移住しなかったが)、その当時についてこんな自己分析をしている箇所がある。 その頃の自分はかなり切迫していて、苦しくなってしまった現状をどうにか打破しようと、あの手この手と考えていた。そしてある日、沖縄移住というアイディアに飛びついた。その瞬間から、そのことを考えることで気が紛れたし、溺れてるみたいだった自分の浮き輪になり、救いになった。そうしようという勢いによって、苦しみから逃れようとしたんだと・・・。 これを読んだ時、自分が現住居に移って来た時からのモヤモヤがパッと晴れたような気がした。そうだったのか、そうだよね。自分たちが本当に欲していること、本当に暮らしたい場所を突き詰めて考えてはいなかったんだなあ、むしろ逆のことをしていたんだなあと。それでは、それを突き詰めるとどうなるのか?自分たちの理想の世界を表現するとどうなるのか?最近この本を読み返していた時、偶然気がついた。あっ、これだ!故郷の宮崎に家を建てることになった銀色さんが端的に、余すことなく表現しているその世界。ここに引用させていただきます。 「外から見ると、周りの環境を邪魔しない地味なかたまりで、門から一歩はいると、そこに秘密の森みたいな独自の空間がひろがっている庭。濃密な異次元の香り、いながらにしてどこにでもいける別世界。どこでもない自由なひろがり。ひとりになれる、誰にも邪魔されない静かで安らげる隠れ家」。 コンセプトはこれがすべて。あとはそれを叶えられる場所をじっくりと見つけ出し、いかに現実に近づけていけるかという作業なんだという気がする。
by cyril-aw11
| 2007-10-26 13:24
| 家造り全般
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