八ヶ岳倶楽部訪問

さて、私の心の師である柳生翁がゼロから造り上げた八ヶ岳倶楽部。倶楽部とは言っても会員制のクローズドなものではもちろんなく、誰でも気軽に雑木林の気持ちよさを味わうことのできるオープンなスペースです。もちろん会費も入場料もいりません。信州に引っ越してきてからずっと行きたかったその場所を、ようやく訪問することができました。
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この倶楽部の主役は何と言っても雑木林。打ち捨てられてアカマツの幽霊林となっていた場所を間伐し、枝打ちして風と光が通るようにし、その上で多種多様な落葉広葉樹を移植しました。植樹したその数、一万本!そのほとんどが近隣で同じように荒廃していた人工林からもらい受けてきたもの。植木屋さんで買ったものも、枯らしてしまったものも一本もないというのが翁の自慢です。

「八ヶ岳倶楽部の庭は立派になった。オレ流の里山は作った。できることはやった」。その言葉通りに高木、中木、低木がうまく太陽光を分け合い、木漏れ日は気持ちよく草刈りされた地表を照らして、そこここから土着の山野草(翁は樹木しか植えません。草花は風が運んできた種子の発芽に任せるのが流儀です)が顔を出している。植生豊かで見事な雑木林です。
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この枕木の歩道も翁お手製のものです。雑木林の中はこの枕木の上を歩いてね、というのがこの倶楽部に存在する数少ないルールのひとつです。大勢の人間が林の中を歩き回って土を踏み固めてしまえば、そこに存在する小さな命の灯が消えてしまいます。

それにこんな素敵な雑木林の中を歩きたいのは、若くて元気な人たちばかりとは限りません。小さな子どもたちやお年寄り、体の不自由な人たちだってこんな枕木の歩道の上なら歩きやすい。そんな翁の心配りでもあるんです。
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「オシャレして野良仕事をやろう」という翁の主張を裏付けるように、多くの様式美と機能美を兼ね備えた庭仕事グッズ満載の併設ショップを眺めるのも楽しいひと時です。

庭に出る時はどうせ汚れるからと、汚れてもいいようなボロを身に纏うことが多かったりしますが、それでは楽しかるべき野良仕事が浮かばれない、野を良くする立派な仕事をするんだからと翁は言います。「オレは白い服を着る。大事な仕事であればあるほど、白だ。奇麗な服だ。どうでもいいような服は着ない。どうでもいい仕事をするんじゃないんだから」。

写真はかわいらしい子ども用の長靴。その他、翁が苦節20年かけて選び抜いたチェーンソーのごとく切れるノコや剪定バサミ、ベルトやグローブなどの垂涎ものが所狭しと並べられており、購買欲を抑えるのが辛かったです(笑)。

ご子息の園芸家・真吾さんの手による寄せ植えや八ヶ岳倶楽部のものから株分けした苗木、雑木も販売されていて、今回はずっといい株を探していてなかなか巡り合えなかったムシカリを手に入れることができました。欲しかったものにここで出会えたのも何かの縁なのかもしれません。
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縁と言えば、今回の初訪問で憧れの翁にお会いできたのもそうかもしれません。ちょうど私たちがショップに入った際に、東京から電車で到着したばかりの翁の姿が!まるでイチローに憧れる野球小僧が、本人を前にしたようなドギマギぶり。周囲はまだ翁に気がついていないようです。「何やってるの、柳生さんだよ!声をおかけしてみたら?」と相方に促され、ようやく翁に写真をご一緒願いました。私はあまり緊張しない性質なのですが、いい年をして仕事でも味わったことのない緊張感でした(笑)。

ちょうど唯一持っていなくて欲しかったにサインをされているところだったので、それに名前を入れていただき購入。緊張で口がうまく回らない中、翁の著作を通してその思想に心酔して土地を購入し、雑木林造りをしていくことをお伝えしました。

「ほう、うれしいねえ。どちらにですか?」
「軽井沢です」
「いいところだ。期待しています。できるだけひとりだけでやることです」

握手をしていただいての別れ際にかけていただいたこの言葉がとても心に残りました。翁のおっしゃりたいこと、よくわかりました。素敵なアドバイスをありがとうございました。
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佐久から車で約一時間。雑木林造りに行き詰った時、何かヒントが欲しい時、ただ翁の庭を感じたくなった時、これから何度も足を運ぶことになりそうです。
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by cyril-aw11 | 2009-10-17 10:07 | 自然・環境
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