イロコイ連邦を知っていますか?

アメリカ合衆国の中に治外法権を認められている連邦国があることをご存じだろうか?その名はイロコイ連邦。ニューヨーク州北部のオンタリオ湖南岸にある、6つのインディアン部族(セネカ、モホーク、オノンダガ、オネイダ、カユガ、タスカローラ)により構成される集団だ。1794年にアメリカ合衆国と平和友好条約を結んでおり、これを根拠にアメリカ国務省のパスポートを認めず独自のそれを発行している。日本国政府は国家として承認していないが、いくつかの国家では問題なくこのパスポートが使用できる。

私がこの連邦国家を知ったのは、米国史を学んでいる過程で1973年のウンデッド・ニー占拠事件に行き当たったからだ。このインディアン蜂起を指揮したデニス・バンクスが、FBIから逃れるためにイロコイ連邦オノンダガ国に亡命したのだが、FBIはこのオノンダガ国内に侵入して捜査する権限を持たず、バンクスに手が出せなかった。「オ~、FBIが手出しできない国家がアメリカ国内にあるなんて!」というのが、イロコイ連邦に興味を持つきっかけだったのだ。

ではなぜ、イロコイ連邦はFBIすら拒絶できるような強い自治権を保有しているのか。それはアメリカに大きな「貸し」があるからだ。西暦1000年頃に5つの国(民族)から形成され、その後もう1つの国が加わって6つの国が単一の国家として平和的に共存するという「連邦制度」という民主政体はアメリカ合衆国の連邦制度の元になっており、アメリカ合衆国が13州で独立した時にはイロコイ連邦が協力して大統領制を始めとする合衆国憲法の制定をも指導したと言われている。

アメリカ合衆国の国章「ハクトウワシ」はイロコイ連邦の部族のシンボルを元にしたものであり、言論の自由や信教の自由、選挙や弾劾、独立州の連合としての連邦制など、イロコイ連邦がアメリカ合衆国の基盤造りに与えた影響は大きい。その功績に敬意を払う意味でジョンソン大統領の時代までは、歴代のアメリカ合衆国大統領が就任にあたってイロコイ連邦を表敬訪問するのが慣例となっていたくらいだ。

さて昨日のBS-i、「地球千年紀行~先住民族の叡智に学ぶ~」は、現代人が天に唾してきた結果として直面している地球環境問題解決の糸口を、イロコイ族の先人の知恵から学ぼうというものだった。地球と一体化してブレずに生きてきた彼らの話には、深く頷かされることが多かった。ポイントをいくつかまとめておく。

[三姉妹農法]

近代農業は大規模単作栽培が基本である。大型機械によって灌漑や収穫が行われ、化学肥料や農薬がその生産力を担保している。一方、イロコイ族は近代農法が発達する以前に行われていた伝統農法のひとつである「三姉妹農法」と呼ばれるトウモロコシ・豆・カボチャの混植栽培を今も実践している。

まずトウモロコシの種を蒔き、ある程度育ったところで豆を蒔く。すると豆はとうもろこしの葉っぱを日除けに、またその茎にはツルを巻きつけて成長していく。次にカボチャを蒔く。その葉は土壌の水分を蓄え、トウモロコシや豆の収穫に役立つ。収穫後の茎や葉などは朽ちて行き、カボチャはこれを養分に育つ。完全なる自然循環を生かしたムダのない耕作法である。

[メッセンジャー・プラント]

人間が植物を求めて森を歩くとき、最初に見つけた植物(特に薬草類)はメッセンジャー・プラントとして取らずに残し、二番目に見つけたものを取る。これが次の年の収穫につながっていく。取る時も根こそぎ取るようなことはせず、必要な量だけそしてまた芽が出るように気をつけて取る。「七世代先の子孫まで繁栄できるように」が合言葉だ。

[地球の輪の中の最下層に位置する人間]

現代の問題はすべて、人間と地球のつながりが希薄になっていることに起因する。人間はいつしか自分たちだけの場所を作って鳥や動物、植物から離れて独立してしまい、大きな世界の一部でなくなってしまった。人間は自然界の最下層の生物であることを忘れてはいけない。人間も命の創造の輪の中にいる以上、これが欠けることは他のすべての生物が苦しむことになる。しかし最初は苦しむこともあるが、人間は最下層に位置している生物であり、いなくなってもいつしか地球はうまく回っていく。人間が生き残りたければ、自分の与えられた役割をしっかり果たすこと。輪の中に居させてもらうことが、結局は人間自身のためになるのだ。

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by cyril-aw11 | 2009-02-23 15:18 | 自然・環境
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