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実のなる木を植えること

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昨日、大町市で開催された「森・人・22 シンポジウム クマなど野生動物との共存」に出席してきた。長野道の麻績ICから峠越えで、軽井沢から1.5時間といったところ。写真は久々に真っ白に雪化粧した浅間山。

主催は「森づくり人づくり22」という団体。

信州大学農学部准教授(研究者代表)
長野県林務部野生鳥獣対策室・鳥獣保護管理係長(行政代表)
信州ツキノワグマ研究会代表(研究者・NPO法人代表)
日本熊森協会代表(動物愛護・自然保護団体代表)

という4名のパネリストがそれぞれの専門性の観点から持論を展開し、それを踏まえてディスカッションしていくという内容だった。

自然を人間への脅威と捉え、それをねじ伏せて征服しようと試み、挙句に失敗した西欧の
「wildlife management」なる概念を自然の恵みに手を合わせ、畏敬の念を持って共存しようとしてきた日本に今さら導入しようとしている行政は論外だが、いわゆる「研究者」たちも目線が完全に「研究」のみに向いてしまい、クマ問題の解決・改善が遠のいてしまっている面があると感じた。

つまり自然という大きな風車の構造を、ちっぽけな人間というドンキホーテが完全に解き明かすことは不可能であり、その不可能なことにあまりにも長い年月をかけていることによって、もっと本質的に大切なことを見失ってしまっているのではないかということだ。

クマの耳に発信機をつける(クマの耳は大切なレーダーであり、クマにとって邪魔な発信機の存在は彼らの生死を大きく左右しているのだが…)。クマの首輪に発信機をつける。そうして彼らの生息域や行動範囲、現在地を知ることが有益なデータとなるのは確かだろう。だが、それによって人里に下りてくるクマの数を減らせているのだろうか?答えは否だ。

日本熊森協会代表の森山さんは、長く中学校の理科教師をされていた。協会設立のきっかけは、平成4年に生徒たちと野生のツキノワグマ保護活動に取り組んだことだったという。子供たちと地元・兵庫のクマ問題を話し合った際、子供たちの素直な反応にハッとさせられたそうだ。「クマは山のエサがないから、里に下りて来るのやろ。だったら、エサを作ってやったらええのや」。

そこからスギ・ヒノキの人工造林で荒廃が目立つ日本の森を動物が棲める、実のなる広葉樹中心の自然林に戻そうとの活動が始まり、広葉樹の植樹会はすでに30回を数える。研究より実践を。考える前に動くということだろう。

なぜクマを守らなくてはいけないのか。クマは日本の最大獣であり、自然生態系のトップに位置しているからだ。クマの棲める環境は、その地域に在来するすべての動植物が存在し得る環境である。クマを自然状態で生かすことができれば在来の動植物を一括で守ることができるのだ。クマは日本の自然の元締めであり、シンボルであると言える。クマを守ることは、原生的な自然をセットで守ることにつながる。これは是非、記憶しておきたい事実だ。

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帰り道、峠を越えながら険しいアルプスの山々で越冬するクマたちを思う。一本でも多く、実のなる木を「約束の地」に植えることを誓いながら。

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例えば、あなたが木を一本植えたら、それはすごいことなんです。

だって木は、命を持っているから、一生懸命生きるでしょう?

数百年も生きるかもしれない。いろんな鳥が実をついばむかも。

何百回もクマが冬を越して、無数の虫やコケが棲むかもしれない。

そしていつか、倒れて腐って、植えた一本の木から、次の木が芽吹く。

木を植えることは命とつながろうとすることです。

実のなる木を植えることは、誰にでも出来ることではないんです。

出来るのは、植物と動物の両方の命を大切にする、やさしい人だけです。

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by cyril-aw11 | 2009-01-26 18:12 | 自然・環境
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